初めてのペースメーカーを体験して

箕原 真弥

 

2009年、宮崎で初めてフルマラソンを走ってから、4回目のフルマラソン(実際にはハーフ)は、4時間30分のペースメーカーでした。

 

いつもは自分の為に、自分が設定した目標タイムを切りたいが為に挑むフルマラソン。

今回は、4時間30分を目標に走りたいと思っている人のために走ることとなりました。

何よりの課題は、同じペースで走り続けるということ。

私の場合、普段のレースでは、最初のハーフと後半ハーフはさらに2つに分け、3種類のラップタイムを使い分けて、目標タイムまでを刻みます。だから、同じタイムで走り続けるというのが、体に馴染んでいません。キロ6分半で走り続ける。木曜日の練習会では、キンモリさんにくっついてペースメーカーの練習をしました。体が慣れてくれば速くなる、下り坂になれば速くなる、何かと速くなってしまう私のペース。そのつど、ペース配分に気をつけるよう、注意されました。

自分の為に走るなら、気にもしないのですが、やはり人の為に走るとなると、気持ちもナイーブになります。「本当に大丈夫だろうか?」と、練習すればするほど不安が募りました。

 

フルで担当するか、ハーフで担当するかと聞かれ、「半分だけにして欲しい」とお願いしました。半分だけにしたのは、完璧なペースメーカーになりたかったから。私について行けば4時間30分で完走できると思っている人に誠実にお応えしたかったのです。

 

当日は、前半を走り終えスタート地点の土手に戻ってきた4時間30分のグループに途中から入りました。普段のレース以上に緊張し、走りが硬いのが自分でもよくわかりました。ペースメーカーのゼッケンをつけているのに、ただ走っているだけの状態でいいのかと自問している時に、後ろから聞こえたくろちゃんの声。

 

「足元、気をつけてくださーい!!」

 

「そうか、声をかけたらいいんだ」と気づき、それからはちょこちょこ声をかけてみました。とはいえ、みんな真剣に走ってますから、和気あいあいな雰囲気はありません。道も細くて走りにくいし、30キロ過ぎるまでは何とも言えない感じで淡々と走っていた私です。

 

「少しはペースメーカーらしいことができたかな?」と思えたのは、ハタ坊さんと最後尾のペースメーカーを交代してからのこと。

 

35キロ付近でダウンしてるまどかちゃんを見つけ、「足がしんどいだけ」と言う彼女の顔がみるみる青ざめていくのを見ると、足だけじゃないと私でもわかりました。とはいえ、座っていられない彼女の背中を抑えることに精いっぱいで、後からくるハタ坊に助けを求める次第。この点は自分の不備を痛感しました。そして、nami-oちゃんもやって来て、私はハタ坊さんに最後尾のペースメーカーを任されました。

 

35キロも過ぎると、疲労もたまり、歩きだす人もたくさんいます。どの人も「歩くか、走り続けるか」と自問自答しながら、走っていることでしょう。

でも自問の結果、4時間で完走する人は…歩かない。

歩き出す人が増えるのが4時間30分を目標にしている人たちではないかと思いました。

体が悲鳴をあげているなら仕方ないけど、心が折れて歩いてしまいそうになっているなら、心が折れないように励ましてあげたい、そう強く思いました。

初めてのフルマラソンだと言う女性に「ついて行ったら、4時間半切れるんですか?」と聞かれ、「そうですよ、切れますよ、一緒にゴールしましょう」と言った時の私の気持ち。

「完走への不安をぬぐってあげたい」と心から思いました。

それからは、一緒に走ってくれたつぼの方と二人で声を掛け合いました。

 

「今が一番しんどいですよ〜」

「しんどいのはみんなです〜、自分だけじゃないですよ〜、一緒に頑張りましょう!!」

「ゆっくりゆっくり、コツコツ行きましょう。このまま走れば4時間半は大丈夫です〜」

 

掛けた声がどのぐらいランナーの心に届いたかはわかりません。

掛けてる言葉も自分に言い聞かせてるようなところもありました。

人と一緒に走り、人を引っ張っていくには、普段のレースで自分に言い聞かせる言葉を声にすれば、「みんな、同じことを思って走っているんだな。」と思って頑張れる人が、中にはいるんじゃないかと思いました。

『経験』から出た言葉だけが、人を励ませるんじゃないかとも思いました。

そう思ったのは、前日、佐田先生の講演を聞けたことが大きく影響しています。

 

結局、私がゴール地点に着いたとき、タイムは4時間27分代。

まだ3分も余裕がある。

時計を見ずに走っている人が、間に合うか、間に合わないかわからない状態で走っているなら、声をかけて、「まだ間に合う」ってを言ってあげたい。そう思って、ゴール手前の坂道で、声を出して時間をカウントしました。

 

ペースメーカーの経験が、これからの私の走りにどんな影響を与えるのか、とっても楽しみです。

走るという行為には人それぞれに意味があり、走っている間に経験すること、感じた思いは、自分を強くしてくれると知ったことが、今回の大きな収穫でした。

また来年、ペースメーカーの機会があれば、是非、担当したいです。

走ることがもたらす経験値の幅を広げてくれる、本当にいい機会だと思います。

来年こそは、フルをみなさんと一緒に走りたいです。